まぬけな始まりかたの冒険

結果オーライなのだけど、一人旅になった途端に大きな失敗をした。

昨日、岡山芸術交流を観るつもりでワクワクで到着したのだけど、なんと「月曜休館」だった。ちょっと自分がバカすぎて動揺した。

「????」となったまま、なぜかクリームぜんざいを食べた。美味しいと少しホッとする。

一時間くらい迷ってから、夜行バスのキャンセルの電話をした。やっぱり目的のものを観ずに帰れない。想像していたよりもキャンセル料がかからなくて、少しホッとしながらさらに安いバスを予約し直した。近くのネットカフェも探して見当をつけて、よし、あとはもう歩こう、と決めたらかなり気分が楽になった。天気が最高に良いのが本当に救いだった。

岡山芸術交流の会場マップは、どうやら何種類かあるらしい。展示作品のもの以外に、町のちょっとオモロイものを載せた「オルタナティヴマップ」というのをたまたま手に入れたので、それに自分のオモロイと思った看板や人やモノを書き込みながら歩いていたらあっという間に日が暮れた。

地方のちょっぴりレトロな商店街は、わたしは惹かれてしまってダメだ。すごくのんびり歩いて色々見てしまうし、おばちゃんと話せたりすると元気になってしまう。今回「ポリボックス」という言葉を生まれて初めて聞いた。おばちゃん独特の交番の呼び方かと思ってその時笑ってしまったのだけど、調べたらそういうものがあるみたいだ。

とにかくこういう場所は魅力がいっぱいゆえに、絶対にタダでは抜け出せない場所だと分かっているので、地図に載っている店や看板を見たらすぐに川の方へそれた。それでも腕を一本もっていかれた(可愛い買い物しちゃった)

川沿いをしつこく歩いて、道から見える家々や景色に飽きてきたころに陸の方へ曲がると「伊勢神社」がある。そこには樹齢500年を超えるという古いクロガネモチの樹があって、これは地図で知って目的にして向かったのだけど、確かに一見の価値ありだった。たくさん支柱で支えてあって、夕暮れの空に逆光だったので黒いおばけみたいに見えて、相当かっこいいんだけど、ちょっと畏れるような気持ちになって、その場にしゃがんでしばらく見ていた。秋っぽい風と快晴の空が葉を揺らしていて、その続きみたいにスルリとわたしの肌も通り抜けていく気がした。駐車場に車が入ってきて我にかえった。

その神社から、さっき歩いていた川沿いの道の何本か陸側を、美術館のほうへ戻っていく。古い店や看板やその名残がいろいろあって、おもしろかった。おしゃれカフェみたいなのもあった。

途中、火事があって焼け崩れたのをそのまま放置しているような場所があった。立ち止まってよく見ると、大きい猫が落ち着いたりしている。あたりには、高温でドロドロになった何かがブチュリと固まったような、黒い、ブローチくらいの大きさのものが地面に散らばっていて、手にとってみたらなんだか想像以上に気味が悪くて、すぐ投げ捨てた。その気味悪さが自分でもよくわからないことに、さらにビビった。人に教えたくて写真を何枚か撮ったけど、もうあまり長く居たくない、でももうちょっと見てみたい、いややっぱり気味が悪いよとグラグラしながら、ジリジリ振り返りながら、その場を後にした。

夜になって、外にいると無駄にお金を使ってしまいそうだったので、すぐにネットカフェに入った。町にあった良さげな銭湯は今日は我慢して、明日の夜行バスに乗る前に入ろうと決めた。旅先で突然計画を変更して立て直す時、我慢したりしなかったりの程度を調整するのにワクワクする。

ここで入ったネットカフェは、浜松で入ったものとは雲泥の差だった。店員さんの話す言葉がまず聞き取れないところから始まり、シャワールームが全体的に黒ずんでいるとか、全体的にドンヨリして古いとか、階段が薄暗いとか天井が汚いとか、いわゆるネカフェのイメージそのままで、最初はちょっと後悔した。シャワールームの壁にあいた釘の跡の穴が不気味に見えてしまって、そこにティッシュをちぎって詰めるくらいにはビビっていた。

なんとか無事に夜を明かして、昨日良さそうだと思っていた、ツタで壁が全く見えない小さな喫茶店でモーニングを頂いた。昨晩の夕飯を肉まんだけで済ませたぶん、と自分に言い聞かせる。コーヒーでしゃっきりする。

今日こそ岡山芸術交流を観る。

もう、この、ほんの30メートル先だ。