あんず飴までの長い道のり

あんず飴までの長い道のり

あめせんべい、というのがある。

長野出身の友人が教えてくれた。

薄くのばした飴のカタマリで、

飴のようになめるというよりは、

煎餅みたいにかじって食べる。

バイト先で、近所のおじさんが

「頑張ってるなあ!!」といって

いろんな飴玉を袋にいれて沢山くれた。

それはいま家のリビングに置いてあって

少しずつ減っているけど、まだまだある。

紙の箱にはいった、ハーブの飴にはまっていて

レモン味のを鞄にしのばせていた時期があった。

友達に「いる?」と聞いたら遠慮されて、

わたしだけそれを舐めていた。

夏で、ひどい湿気で、紙の箱だから、

さっさと食べてしまわないといけないと思っていた。

バタースコッチの飴、こちらは大きな缶に入ったもの、

これは大きいから持ち歩いていなかった気がするけど、

飴同士がくっつかないように白い粉がまぶしてあって、

飴を口にいれたあとに指を舐めるのが少し楽しかった。

いつもの、薬用の、三角形ののど飴

龍角散と、龍角散じゃなくなったしぶい包みののど飴

なかに梅干しが入っているべっこう飴

梅のペーストが入っていて、

なめているうちに舌を切りそうになる小粒の飴

黒飴

お祭りの日にだけ食べる、りんご飴とあんず飴

ほんとに今日の今日まで、それらの違いがわかっていなかった。

乾いて大きく、袋にいれてくれるほうがりんご飴、

ウェットで、水飴でつつまれてモナカにのった可愛らしいのがあんず飴だった。

りんご飴は、大きくてピカピカで、きれいだったけど、中のりんごがぱさぱさしていた。

あんまりおいしくないし食べにくくて、こんなんだったっけ、

と思っていたら、あとになってあんず飴の屋台をみつけた。

すぐに並んで買った。大人になるとお祭りで衝動買いができる。

くじ引きをしたらもう一本当たったから、一緒にいた友達にあげた。

水々しくてジューシーだし、大きな氷の上にツヤツヤで並んでいるのが愛しかった。

その奥では屋台のお兄さんが、すっかり真っ赤に染まった手で、色のついたあんずに飴をからめている。

その手でお金のやりとりとか、普通にしていて、

なんか汚くていいなあと思った。