インドネシア滞在日記④ 5/1〜5/5

ーーー2024年・春 インドネシア滞在日記④ 5/1〜5/5

※Ungaran山編-1ですが、ここから先、帰国までの1ヶ月は嬉しいことの増え方がエグく、急に分量が増えすぎて現地で挫折したので、思い出しながら書くフェーズに入ります。短く書く心がけだけど思い出せすぎて短くならない!!
 
※前回までのあらすじ。5年前に偶然が重なって出会い、かなりお世話になったカルトゥンさんというパーカッショニストのおっちゃんに連れられて、スマラン県Ungaranにある山奥の村を訪れたAoi。その山奥にアトリエ兼自宅を構え笛を作って暮らしているタフタと、近所の家族と、入れ替わり立ち替わり遊びにくる彼らの友人たちとのんびり過ごすことになりました。
 
 
5/1(水)
朝、寝坊!起きたら部屋にはもう誰もいなかった。さっと水浴びをして台所へ行くとタフタがご飯を作ってくれていて、カルトゥンさんと3人で食べた。食べ終わったらすぐ皿を洗う、というのが昨日から徹底されていて非常にいい。皿を洗う場所は単なる野外で、雨曝しのバケツにパイプ(川から引いた水をシュロの皮の繊維を使って三度濾過する自作の水道)からの水を溜め、ココナッツのお椀ですくって使うという、これまでの人生で見たなかでも最もワイルドなスタイルだった。間違いなくかなりワイルドだが、でも、全然汚い感じはしなかった。水浴び場とトイレでも思ったけど、山のなかと町とでは、清潔さに対する感覚が全然違う。土が汚れをもらってくれるのが、本当に本当に便利だし、心地よい。バケツには、たまに葉っぱやボウフラが浮いていたが、すくって捨てればいいだけなので気にならない。
 
今日は昼間に市内の音楽スタジオに遊びに行く。カルトゥンさんのバイクに乗せてもらって山を1時間くらい降りた。5年前に一緒にライブもやったベーシストのジョハンに会えた!セッションは「大丈夫かな」と思いながらも気合で楽しんだ。(バンドがいる状態でギターを即興で弾きながら歌って音楽らしきものを成立させるの、むずすぎるけど気合いでやった)終わった後にみんなでごはんを食べた。どうやらジョハンは今バイクが故障中らしく、セッションの途中で友達がきて、彼を送ってくれた。今回、2件そういうのを見たんだけど、仲良くていい。友達、暇かよ!と思ってしまうけど、助け合いなんだろう。いいなー。
ごはんを食べながらのんびりおしゃべり。ジョハンが、日本のアニメが好きだからバンドの名前を日本語にしたんだ、と言っていたのが気になっていたので深掘りしたら、しっかりアニメオタクなことが判明して楽しかった。作品の名前を出したら同じ制作スタジオの別の作品の名前がスッと出てくるのが、日本の友達と話している時と同じスピード感で、あまりにも嬉しく、他のメンバーを置き去りにして「『響け!ユーフォニアム』の新しいの始まってるよな!」とか「CLANNADすばらしいよね、でもめっちゃ泣いちゃって一周しかできてない」などとわかるアニメのタイトルを互いに出し合っては「いいよねえ〜」を繰り返した。Satoshi Konいくつか観たと言っていたので『妄想代理人』を勧めたら、すぐYoutubeで調べて「えっOPがSusumu Hirasawaじゃん」と前のめりになったりしていて、マジで話が早かった。ポップカルチャーは本当に偉大だ!ありがとうアニメと音楽…!
 
夕方の帰路は、あまりにも眠くて、でもバイクの後ろに乗っていて居眠りしたら転げ落ちて死ぬので、すごく眠いがめちゃめちゃ怖いという、初めて経験する状態だった。本当に一瞬だけど眠気で意識が飛んでハッと我に返った時があまりにも怖すぎて、以降は眠くならなかった。再び山の家に帰った。
おやつ的タイミングでご近所さんの家に行ったら、ココナッツを割って取り出したココナッツウォーターと、ココナッツの内壁を削いで得たココナッツミルクのジュースに、Gula Arenを加えた甘い具沢山ドリンクをご馳走してくれた。これにさらにアボカドをいれると美味いぞ!とお父ちゃんがアボカドを持ってきてくれて、混ぜて飲みながら食べた。ぐちゃぐちゃの見た目だけどめちゃくちゃ美味しかった!
そして、どうやらここに住んでいるのはタフタの家族ではなくて、めっちゃ仲がいい他人ということがだんだんわかってきた。ほぼ家族同然の距離である。家を建てる時にお世話になってそれからのご縁だとか。
ヤギの声がふいに聞こえて、ヤギがいるんですか?と聞いたら、ここのお父さんがヤギを飼っているというので見せてもらいに行った。めちゃくちゃいっぱいいて全員元気だったし、昨晩生まれたばかりという小ヤギがいた!Aoiが来た晩に生まれたからこのヤギはAoiって呼ぼう、ということになって、巷に聞く「ストーリーのある名付け」をリアルに目の当たりにして、しかも当事者にしてもらっちゃって、ワロタと思いつつもなんだか嬉しかった。(生まれた日に雪が降ってたから雪ちゃんみたいな)カンビン・アオイ、マジで絶対に元気で生きて欲しい…。(※ kambing=ヤギ)あと、タフタが小ヤギの声真似をしていて、すごく上手くて地味におもしろかった。
 
のんびりしているうちに夕方。タフタの友達が2人遊びにきて、カルトゥンさんは用事があって帰った。メンバーは入れ替わったけどやはりご近所さんのお家で夕飯をいただき、やっぱり今日も「寝るっしょ」というタイミングで歌でも歌おうということになった(夜に歌いがち)。タフタが「昨日歌った歌を歌いたい」と言ってくれたので、拙作『においだけの海』の歌詞をローマ字でガーッと書き出して、とりあえずサビだけ一緒に歌ったら、すぐ覚えてギターを弾きながら歌ってくれた。すご〜い!いいメロディーだよねえ、と言いながら何度も歌ってくれるのがあまりにもうれしすぎて、ちょっと頭や心がどうにかかなりそうだった。
4日に、日本人のわたしの友達が(ゴールデンウィークを利用してジャワに来ていて、偶然タイミングが合った!)来ることになっていたので、彼女がきたらこの歌を聞かせたいね、などと言いながら、歌詞の意味を説明したりしつつ、わりとがっつり練習し、就寝。
 
 
5/2(木)
朝、タフタと「ちょっと山を降りてPasar(市場)に行って朝ごはんの材料を買おう!」といって出発したはいいものの、村の人に道を聞くと「市場は土日のみで、今日はやってない」とのことだったので、ちょっとしたジャワのローカルおやつと野菜だけ買って、洗濯物を洗濯屋さんに託してさくっと帰ってきた。洗濯は、ジョグジャや東京の感覚で「3時間くらいあれば終わるっしょ」と思っていたら、普通は2日かかると言われたので、お急ぎで明日の午後に仕上げてもらうように頼んだ。けっこう露骨に嫌な顔をされて、やや凹んだ。帰りにそのままご近所のお家へ行くと、誰もいない。でも残り物がキッチンにあって、それを普通に食べた。マジで家族の距離感すぎてちょっとすごい。この時のおしゃべりで、タフタの年齢がわたしより1つ若いことが判明して「え?ほぼ同い年じゃん」などといって、それからお互いになんとなくちょっと態度が雑になって、よかった。気兼ねなく名前が呼べるようになったら、もう大丈夫、親しさを作っていける、という気がする。
 
昼まで各自思い思いに過ごした。タフタは笛作り、わたしは2階の縁側のようなところで、セミの声の音程をひろってメロディのヒントにできないかな〜とギターを弾きながら苦戦していたら午前中が終わって、お昼はさっき買った野菜でスープを作って食べた。
 
日が暮れて夕飯も終わった頃合い。星がもう少しよく見えるかも、といって山の上の方にバイクで行ってみた。5分くらい上ったところの道に、光る町が見下ろせる絶景の崖があって、そこに手作り感のあるテーブルと椅子を置いただけの非常に簡単な作りの展望エリアがあった。昼間はカフェになっていたりするような感じだが、夜遅いので人がいない。でも我々はそこでバイクを降りて夜景を堪能するとかはしなかった。そう、スペシャルな感じは特になく、ただ行って帰ってくるだけの短い時間だったけど、星の見える数だって村とたいして変わらなかったんだけど、寒いくらいの山の空気はひたすら美味しくて、わたしはめちゃめちゃ嬉しかった。空気を吸い込むだけで心が潤うみたいだった。
帰り道を降りながら、タフタが「もう他の土地に住めないくらい、自分はこの山で暮らすのが好きだ」と言っていたけど、もうすでに、わたしも好きだよ、ここが!!!
 
我々はとても真面目で練習熱心なので、また寝る前に歌った。ひとしきり練習して、寝る支度のタイミングでわたしが洗面所に行って戻ってくる時、ずっと歌っていたのの延長という感じでタフタが1人で練習しているのが聴こえた。わたしの歌だ!あまりにも嬉しすぎて、もう……泣いてしまいてえな………と思いながら、玄関のところでしばらく立ち止まって、ひとしきり歌声を盗み聞きしてから、ニコニコ顔で戻った。
言葉が下手だけど嬉しい気持ちや感謝は可能な限りフルで伝えたいので、ここへ来てからというもの基本的に顔芸と声色がオーバーなんだけど、この時はそれを差し引いても2000%くらいのニコニコをしていたと思う。そして、ニコニコ顔をしたらたいていニコニコ顔が返ってくるもので、うれしい連鎖に終わりがない………もうこころがいっぱいです
朝も昼も夜も、ずーっとあらゆる虫や鳥が鳴いている声が聞こえ続けていて、この小屋は静かな時がほとんどないのに、なぜか寝付けるので不思議だ。借りた寝袋と持参した布を体にかけて壁の近くで仰向けになっていたら、屋根の瓦の手前の梁のところをネズミが歩いているのが見えてちょっと嫌だった。
 
 
5/3(金)
朝、ご飯を食べて軽く掃除をしてから、タフタが提案してくれた「川のほうまで行って、練習した歌を演奏している動画を撮る」という遊びをしに出かけたが、早朝過ぎて草が全部濡れていて荷物も置けないし座れないので、出直すことにした。でも朝の川辺はめっちゃ気持ちよかった。真夏みたいな日差しで、岩も水も草も木々も、キラキラしていた。
時間をおいて再度川辺へ。三脚が足りないので木の枝にテープでiphoneを固定して動画を撮った。タフタ、すでに歌をかなり覚えていてすごい…。雲がどんどん動いて、日差しがギラギラになったり穏やかになったりを繰り返していておもしろかった。
3テイク録って満足したので、腹ペコでお昼を食べに、またまたご近所さんの家に行くと誰もおらず。やっぱり残り物を勝手に食べた。ほんとにいいの?どういう関係なの…?と思っていたら「ごはんのお礼に野菜や果物を買って夕方に届けよう」と言われてホッとした。
少し山を降りて買い物して、そんで昨日出した洗濯物を回収して帰ろう、ということになったけど、まだ出かけるには暑すぎるので家でお茶を飲んで気温が下がるのを待った。
 
買い物を終えて帰ってきて、近くの畑にあるグァバをとってきて食べた。白いグァバだった。これは初めて見た!さっぱりしていてほとんど甘みがなく、でも美味しかった。その辺にあるものを採って食べられるのは本当に良いし、ちょっとおもしろい。家の近くの道端で、タフタがふいに草をひと束ひっこ抜いていたので、何それ?と聞いたらレモングラスだった。レモングラスは根っこに近いほうを使うので、根っこごと引っこ抜いて持って帰る。無事にその日のスープと次の日のごはんに使われた。日が暮れる前、少し雨が降った。雨が降ると寒いくらいの気温になる。
夕方、タフタが新しく完成した笛の演奏を録音したいといって、部屋(※ほぼ外)でレコーダーを回して少し吹いていたら、町のほうからアザーンが鳴り響き出して、あっ…、うーん、終わるの待つか……。といって中断していたのが印象的だった。15分くらい、ぼんやり待つ。そうせざるをえないワケだが、それにしたって寛容だよなあ、こういうのが国民性を作るだろうなと思った。今、インドネシアじゅうのミュージシャンたちが待ってるね、と英語っぽい(気がする)冗談をわたしが言って、ちょっと笑った。ここは川が見下ろせる谷の岸壁みたいな場所なので、町からの音が反響して、ちょっと意外な方から音が聴こえたりする。
 
 
5/4(土)
今日の朝ごはんは Nasi Godoでした。ココナッツやレモングラスと一緒に炊いた白いごはん、テンペや野菜と一緒に食べる。これがめっちゃ美味しかった〜!小分けの袋に入った粉状の、ココナッツミルクのもとを使っていて、なるほどコレってこういう時に使うと便利なんだ、と思った。日本でも作りたいな〜。レモングラス大好きだからベランダで育てようかな。
タフタ、あなたの手は料理も笛も家も作れる、すごい手ですね!と褒めたら「近所に食堂が全然ないし、食堂はいつも同じメニューしかないし、時間があるから、料理に関してはここに住み始めてから勉強して覚えた」と言っていました。時間と学ぶ心があるって大事だな…と当たり前のことを思った。当たり前だけど簡単ではないことをこの人はしっかりやっていて偉いな、、
キッチンと居間(土をかためた床にゴザが敷いてあり一階の屋根が天井になっているが、壁はなく、実質、外)の脇に、石を積んで作った炉がある。たまにここでゴミを焼くんだ、と言っていたけど、マジでプラスチックとか焼いてて、それは大丈夫なのか…?と心配になった。話を聞くと、地域のゴミ収集が全然うまく機能していなくて、もはや来ないらしい。だからこのへんの人たちはみんなプラごみは各自の庭で焼いている!なんてこった…。もはや来ないってヤバすぎるだろい!そういえばジョグジャカルタにいた時も、聞いていた曜日にゴミ収集車が来なくて、本当に気まぐれみたいな謎タイミングで回収されていくので、どうなってんの…?と思っていた。インドネシアのゴミ問題は今けっこう深刻だと他の日本人からも聞いた。なんとか改善されて欲しい。でも、プラスチックの袋を焼いた炎は青や緑に光っておもしろかったし、煙があがると、真上にあるアボカドの木から落ちる木漏れ日が、何本も光の線になって見えて、とても美しかった。
 
ゴミを焼いていたら近所の家のお父ちゃんがふらっとやってきて、急に雑草をむしっては谷へ捨て、むしっては谷へ捨て、という掃除を楽しそうに、しかし黙々と始めたので、つられてわたしも草むしりに参加した。タフタは地面がちょっと斜めになっているところの土を鍬で掘って水平にする作業を始めた。わたし、草むしりのバイトしてた時期が3年くらいあるんだ、だからこういうの得意だよ!と言いたかったけど、ぱっと言葉が出てこなくて諦めてしまって悔しかった。山の虫や土の汚れが手につくことが全然気にならなくて、むしろなんだか誇らしい気分で素手で作業した。インドネシアの人って驚くべきことにビーサンで工事現場の作業をやったりするくらい作業時の身の安全管理ガバガバなので、つられて油断している…。
 
タフタの作っている笛を買う約束をしたので、午後にお金をおろしにATMに行こう!ということになった。現金は本当は足りていたんだけど、海外で使えるデビットカードでATMから現地通貨をおろす、というのを本当にできるのか不安だったので誰かと一緒に行きたかったのだった。嘘ついてごめん。そしてめっちゃスッとできて、なんの困難もなかった。よかった。ありがとう。
夕方にカルトゥンさんがガールフレンドのウニさんと一緒に遊びにくると聞いていて、ATMに行く道すがら彼らと偶然すれ違ったので「お!」という感じで道で鍵を渡し、先に行ってもらった。我々が帰ってきたら、2人ともすっかりリラックスした様子で、床に寝そべってお菓子を食べていておもしろかった。人ん家でゴロゴロしたり普通に寝てたりする感じ、あんまり日本では見ない気がする。ご近所さんとの距離感といい、なんかみんな仲良くて、こっちまで嬉しくなる。
カルトゥンさんとは、当初「サラティガ(こことジョグジャカルタの間くらいにある街)でライブをやろうよ」という話をしていたけど、諸事情によりできなくなっちゃったので、Aoiはここが気に入ったなら、来週また来なよ、そんでここの庭でプライベートミニコンサートやろうよ、という提案をしてくれた。え〜!絶対やる〜!とノリノリで返事。
加えて、水曜日にスタジオに一緒に入ったジョハンが「来週もスタジオ入ってセッションやろうぜ!」と言ってくれているとのことで、嬉しいのみならず、めっちゃホッとした。
 
昨日くらいから、わたしの日本人の友人・光さんの到着をみんなが「いつ来るの?」としきりに訪ねてくれるのだけど、わたしにもよくわからず、結局20時半を過ぎて連絡をとってなんとか合流した。
彼女と連絡をとっていたわたしのスマホのアプリが不調で、急に再インストールが始まってしまい、しかし電波が非常に弱いので全然進まず、連絡手段がなくなってけっこう困った。異国で連絡がとれなくなったらさぞかし不安だろうと光さんのことが気がかりだった。みんなが夕飯を食べた後のんびりしているタイミングで、わたしだけが不安がって1人で外へ出て電波を探してオロオロしていたら、タフタが電波のあるところまでバイクを出すよ、と言ってくれた。最初に寄ったところのWi-Fiは強度が足りなかったので、さらに降って「シグナルきた!!」といって道端で連絡をつけて、戻った。光さんの迎えは顔のわかるカルトゥンさんが行ってくれた(5年前にも会ってる)。なんだか大変だったけど、ご近所さんのお家に、なんとか光さんを迎え入れられた。みんなありがとう…
山なので、夜は本当に寒い。わたしはうっかり薄着で電波を探すバイクの旅に出てしまったので、戻ってきた時には夜風ですっかり凍えてしまって、体を縮めながら「上着を取りに一度タフタの小屋に戻ります…1人で行けます…」と言っていたらお父ちゃんがめちゃくちゃ分厚くて重いレザージャケットを貸してくれた。着た途端にかなり暖かかったし、「これ借りられたからもういいよ!」と止めたのにタフタがわたしの上着を取りに行ってくれて、なんかもう全員が優しすぎて、またしても「泣いていいかな……」という気分だった。
今回きてくれた友人は、光さんというわたしと同い年くらいの女性で、5年前にわたしがジャワに半年いた時、近くで同様の仕事をしていた仲間だ。かなり久しぶりに、しかも急にインドネシアで会えて、嬉しかった。2日くらい前に急に「ジャワ行くんだけど〜」と連絡をくれて、「え?‼︎わたし居るんだけど!会うしかないし山にぜひきて」ってなったのだった。光さんは、ここのお母ちゃんのご飯に加えて持参したカップラーメンまで食べていて、胃がタフすぎて見ていておもしろかった。時間が遅かったけど、アボカド+グラアレンも食べ、とにかくおしゃべりした。インドネシア語と英語と日本語がぐちゃぐちゃに飛び交いまくっていて、わたしは頭が混乱した。
寝る前に、カルトゥンさんとウニさんと、タフタと光さんとわたしの5人で、名前の話をした。キラキラネームの概念を説明するのがめっちゃ難しかった。名前の流行りとかはインドネシアも同様にあるらしかった。あと、苗字が同じ人同士は他人でも結婚できない地域があるらしい。タフタの名前を意味も音も合う漢字表記にするのに難航して、眠気が勝ったので途中で諦めてみんな寝た。
 
 
5/5(日)
朝起きて、わたしが光さんに「太陽の軌道と方角の関係が日本とはちょっと違ってて…」という話をしていたら、タフタがノってきて、季節で太陽の沈む方角がかなり変化するよ、というのを教えてくれた。なるほど赤道直下に位置していると、太陽の角度が急なので、季節によって日の出・日の入りの方角が大きく変わるのだ。
このへんから段々ハッキリしてくるのだけど、タフタは自然大好き+ややスピリチュアルな思想を持っていて、太陽や月や山や草木、瞑想などの話題になると、ノって色々教えてくれる。そのバランスがちょうど良くて、あ〜友達になれる〜、と思った。
初日、初めてここでタフタに会った時、Gula Aren(黒糖のような現地のパームシュガー)と現地のお茶と、そして近所の人が揚げたTalas(の根っこ)のチップスでもてなされて、あっ、この人、めちゃくちゃストイックに自然派の人なのかな、と思って少しハラハラしたのをよく覚えている。わたしは、Ambarawaで再会した時に日本語の先生たちがくれたコンビニの袋菓子がたくさん入ったビニール袋を「お土産です…」といって差し出しながら「こんな人工甘味料と添加物だらけのお菓子をこの人はもしかしたら好きじゃないかもしれない…」と思った。が、その中にあった、チョコレートのかかったウエハースにココナッツをまぶしたお菓子(日本でいうブラックサンダーみたいな感じで個包装になっていてコンビニとかでよく見かける)を、彼が無言で次々に食べていた時があり「あっこれ好きなんだ笑」と思ってホッとしたし、その後も、もう雑なメシで済まそうという感じでインドミーという即席ミーゴレンをおかずに白米を食べた日もあったし、スープに化学調味料をちょっと足すのにも躊躇いがなかった。過激なくらいの自然派とか、アンチ現代生活みたいな感じだったら、ちょっとついていけないけど、このくらい肩の力の抜けた取り組み方だったら共感できる。スマラン市内(※名古屋ぐらい都会)の出身で、都市生活に飽き、山に憧れるようになってここで生活しはじめたという話を聞いて、めちゃくちゃわかる〜と思った。彼の雰囲気が村の人たちと違っていたのにも、深く納得した。東京から地方に移住してイイ感じの暮らしをしている人たち(そのほとんどがクリエイティブな仕事をしている)が知り合いに何人かいて、そういう人たちのことを思い出した。わかる、わかるなあ〜、わかるぞ〜、、
 
朝ごはんは、またご近所さんちにお邪魔した。先日わたしがいただいた、ココナッツウォーター+ココナッツミルク+グラアレン+アボカドの具沢山ドリンクに、さらにライムを絞るとめちゃ美味い、というのを教えてもらった。ほんとうにおいしい。日本でもやりたい。
ここのお父ちゃんはいろんな商売をやっているようで、ヤギやお茶も仕事だが、電気を使ったマッサージ?を最近再開したらしい。ひとしきり説明の後、やってみるか!と聞かれ、なんかよくわかんないけど面白そうなので、上半身だけやってもらうことにした。部屋へ上がらせてもらって、Tシャツを脱ぎ下着だけになって椅子に座り、ウニさんと光さんが見守るなか、施術開始。電気を出す機械をお父ちゃんが足で踏んで、わたしも踏んで、オイルを馴染ませた指で肩や背中をスーッと撫でるとビリビリする、という、お湯なし電気風呂みたいなものだった。鍼や整体やマッサージガンの刺激に日常的に晒されているわたしの体には物足りないくらいの弱い電気刺激だったが、額や目の周りを電気の指でグーッとやられると、痺れと同時に、閉じた瞼の裏に雷のようなものが見えて、それがめちゃくちゃおもしろかった。わたしが終わった後に光さんも顔だけやってもらっていた。Hikaru は Aoiよりも首肩が凝ってる、と言われていた。お仕事マジでおつかれ…
みんなで写真を撮ったり、なぜか急にバイクに3人乗りする遊びをして家に戻ったりして散々笑って、わたしと光さんは山を後にすることに。カルトゥンさんとタフタにバイクに載せてもらい、15分くらい山を下ると、最寄りのバス停があった。ここからスマラン市内へ行くことができる。
わたしと光さんはスマラン市内のバス停まで着いた。ここで乗り換えてAmbarawaまで行くのだけど、けっこう疲れたので、近くの食堂で串焼きとナシゴレンを食べて休んだ。5年くらい会ってなかったので、互いの近況を改めて話したりした。
さらにバスに乗り、数日前と同じTerminal Bawenに向かった。このルートの赤いバス(Trans Jateng)に、わたしは5年前にも散々乗った。懐かしい。3500〜4000ルピアくらいの破格で乗れるのだけど、この日わたしは荷物が大きかったので2人分の料金を払った。(今回、同様の荷物量(ギターとリュック)で何度も乗ったが、2人分の料金を払う時と払わない時があって、このあたりはスタッフの裁量らしかった)
光さんと別れて、ソロ経由でジョグジャに戻った。山からスマラン市内までのバスは初めてだったが、それ以降は全て乗ったことのあるバスなので気持ちは余裕だが、とにかく時間がかかった。15時くらいに山の村を出て、ジョグジャに着いたのは夜の22時くらいだった。途中、ソロでバスを乗り換えた時に「このお兄さんもジョグジャに行くから一緒にいきな!」とスタッフに言われて、路上で降ろされ、えっ路上なんだがwwwと思っていたらそこはバス停の出口の近くで、バス停を出てきたバスがスピードを緩めてくれて乗せてもらえた。あまりにもカルチャーが違いすぎる…。でも、一緒にいきな!と急にわたしを任されたお兄さんは終始なんとなくうっすら気にかけてくれていて、ほんのり心強かった。ジョグジャで降りる時に会釈して別れた。
ジョグジャのバス停(Terminal Giwangan)だが、この周囲は利用者も少なく(ひとつ前のバス停で多くの人が降りる)暗くてめちゃくちゃガランとしている上に、アプリで呼ぶタクシーがターミナル内に入って来られないルールになっているらしく、ひとしきり離れたところまで夜道を歩いてタクシーを呼ぶ、という方法をとることになった。ちょっと怖いしドキドキしたけど、なんとかなった。よかった…。
ジョグジャの滞在先に帰ったら、出国直前に買ったそこそこ良いイヤホンを紛失していたことが確定してひとしきり凹んだ。
今日の昼間、光さんが帰る前に、タフタと一緒に拙曲『においだけの海』を演奏したのだけど、その動画がめちゃくちゃ美しくて、これは完全に宝物だな…、と思いながら、寝る前にiPhoneのカメラロールで2回再生した。