ヴォイスの次の地平?/大変身の居心地の良さ

わ〜!全然更新できていなかった!4月のうちに書きつけておきたいことが2つある!


近況、一番大きなこととしては、単独自主企画「透明洞窟」を先週、開催しました。昨年の初夏に東京に引っ越してきてから、都市で働きながら暮らす日々(自分で選んだことだけど)に、心身ともにゴリゴリ削られ、秋頃にはちょっと病みかけながら必死で考えていたことを根っこに、昨年末にクリエイションした部分なども引き継ぎながら作った新作だった。実質1年くらいかけて作った感触です。まだまだ色々な人に聴いていただきたいので、ブラッシュアップしつつ再演できたらと思っています。

今回は、作ることが本当に楽しかった。以前はもっと作る過程で苦しんでいた気がする。今回だって楽だったわけじゃないけど、でもずっと楽しく発見と気づきと納得と共に進んでいって、我ながら成長のようなものを感じた。さすがにもう10年くらい「作ること」を本気で考えているわけで、そろそろそうでないと、思い切り楽しくないと、続けて行けなくなっちゃうもんね、ええ、今はすごく続けていける感じがしてます。

あと、この新作にあたって、自分にとってもうひとつ大きな進歩だったのは、声の使い方だった。特に「奇声」としか今のところ呼びようのない声の使い方。

いわゆる「奇声」にも、かなりバリエーションがある。当然これまでも使い分けていたけど、今回はもっとシビアに狙った音を、鳴き声ではない無機質な音として、実感としてはほとんど言葉のような具体性をもって演奏していた。それは、やっていてけっこう新しい体感だった。効果音でも環境音でもない、言葉みたいにイメージを明確にもった音を発するのは、自分としては謎に納得があって、口から景色がバーーッと流れ出ているみたいでおもしろかった。楽器みたいに、シンセサイザーとかエフェクターをかませたエレキギターで任意の音を作ってバーッと出すような感じに近いかもしれない。音色というかバリみたいな部分に声の絵の(例えば「LEDみたいな白い光の粒、光線」をちゃんと描くために必要な喉の締めかたの角度があった)ディティールが宿るので、練習してその精度があがっていくのも心底楽しかった。これまでの「使い分け」なんてぜんぜん漠然としてたな〜と思った。でもある意味ではこれは音をイメージに縛ることになるんだろうか。聞く人と共有できるいわゆる言語じゃないから、まだまだ開いているとは思うけど、ともかく今後もっと研究したい表現です〜(この音について、自分の譜面にはカタカナのキの長い\をコみたいに曲げて半濁音の○をつけた謎の文字に伸ばし棒で表現しているのですが、表記についてはまだまだ検討の余地あり…。)

これに至ったきっかけは大きく2つある。ひとつは、ここ3年くらいちょこちょこやらせていただいてきた、即興の演奏。声ではないほかの楽器の奏者と、一緒に即興的に音を出して演奏していくなかで、わたしは言葉や描写からすっかり自由になった「音」としての声を発見し続けていたと思う。ひとりで家でやっているのでは思いつきもせず挑まないことに、即興の演奏では突然挑むことになる場合があって、そういう時に「あ、喉からこんな音出るんだ」と気づく。こういうことの繰り返しで引き出していただいた音がたくさんある。ありがとうございます。

もうひとつのきっかけは、3月にシェアアトリエでほぼ身内で開催した、奇声を出してみるワークショップのようなこと。主に俳優の、奇声を出すことに興味のある人に集まってもらって、わたしが影響を受けたヴォーカリストをちょろっと紹介しつつ、今日はこの奇声を特に集中して練習してみます!といって、同じ発声の仕方で、口のなかの形を変えて音の響きが変わるのを体験してみたりする会だった。その時に、ひとに言葉で説明していくなかで、自分はこうやっている、ということがどんどんクリアになっていくのがおもしろくて、多分わたし自身が一番勉強になった。
((体をコントロールするためのイメージを持つ際に言葉が一役買うということについて、おもしろいよね(天井から頭のてっぺんを糸でつられている感じで立つ、とか、血管の中をマグマが流れているイメージで踊る、とか…)という話をしていたら、友人が教えてくれた本があって、今読んでいるのですが、おもしろいです。↑みたいなイメージっていうよりは、もっと具体的、物質的な身体コントロールの話。言葉にならないことを言葉にしていくことの希望がある〜。ジョギングが楽しくなって下半身の筋肉の解像度が上がり感動したばかりの人間なので、わかりみが深い。序章で、イチローが21歳の時に「(言葉で)説明できるヒットが欲しい」と言っていた(感覚的に打てるけどこれではダメだと思っている)というくだりに痺れました。(『「こつ」と「スランプ」の研究 身体知の認知科学』(諏訪 正樹):講談社選書メチエ|講談社BOOK倶楽部)))
 
こういうことがあったから今回は、今までよく使ってきた「鳴き声」「生き物の気配」としての奇声だけではなく、もっと別の音として聞こえるようなものを使いたいという発想が自然に出たのだと思う。口から出ているからといって鳴き声とは限らない。
今回の新作で没になったアイディアに「歯軋り」があった。あれは、鳴き声ではない音だし、感情と関係がないから、隣で寝ている人が歯軋りをしていると人間離れした存在のように思えてちょっと怖い。そのことを考えていて、人は口から出る音についつい感情を見出そうとしてしまう(→それが見えないと怖い)のではないかと思い、じゃあ、感情とか鳴き声とか、そういう有機的なことではない音を出すとはどういうことだ、というような回路もあった。
 
作品についてはあまり自分で書き過ぎないほうがいい気がするのでこれくらいにします!



あと、また別の作品の制作でも、最近すごくおもしろかったことがある。GINZA SIX蔦屋書店で開催中の海野林太郎さんの展示(『マヌケだね 楽しい夜さ 好きだよ』〜5月15日まで会期延長、詳細:https://qr.paps.jp/FmDEi)の映像作品に出演しているのですが、この撮影でのパフォーマンスが自分にはすごく新鮮な経験だった。

わたしは映画でも撮るような本格的な特殊メイクを施して、皮膚の色や顔の造形を大胆に変え、大変身!して、歌が好きなマーフォークとして出演した。他にも2人、のんびりしたマーフォークと、聡明なゴブリンが出演している。
特殊メイクには3時間くらいかかった。肌の色を青く塗ったり顔の形を変えたりして完成した自分の姿は、だいぶ自分じゃなかった!そして、それで鳴き声を出してみると、なんかこう「しっくりくる」の度合いが尋常ではなかった。というか、ある種の「役」として鳴き声を出せることの自由さ、清々しさ、居心地の良さがあった。かえってとても深く実感を持って鳴けたのが意外でもあったし、とても嬉しかった。

わたしは普段の自分の、見た目というか人間の状態(?)に納得できていないというか、できるなら声だけになれたらいいのにな〜としょっちゅう思ってきた。だから、人間ではない見た目に人間っぽくない鳴き声をあわせると、完全に違う生き物になれるようでシンプルに嬉しかった。こういう特殊メイクはなかなか簡単にはできないけど、こんなに大胆かつベタな「変身」に、こんなにしっかり感動するとは思わなかった。ありがとうございました。

また、印象的だったのは、今回の特殊メイクをしてくれた降幡さん(madmaker – 特殊メイク・特殊造形・特殊ネイル)とは初対面で、顔の型取りをした時のお喋りの流れで自分が普段歌を歌っていると話したところ「どんな格好で歌ってるの?」と聞かれたことだ。えーっ、そんなこと考えてもみなかった。でも、言われてみれば、そういうことを考えても良いはずだ。

わたしは、大昔…、大学2年くらいの時、当時みた舞台の、白っぽくてナチュラルな衣装を身につけた自分と同い年くらいの女の俳優が「等身大」みたいなセリフを言う演劇をなぜか原体験みたいにしてしまっていたところがあった。多分その影響で、女っぽくも男っぽくも大人っぽくも子供っぽくもない、「なんでもない格好」がいいと思って、いつもTシャツやジーンズを身につけてパフォーマンスをやってきた時代があった。つい最近までも、その延長にあるような無難な服で演奏してきていた。やっと、2年くらい前から、だんだん「髪が青くても大丈夫そうだな〜」とか「ちょっと変わった服でもいけそう」と思えるようになってきた。
悲しい話ですが、衣装に関しては良い思い出がない。以前、ライブの終演後に誰だか忘れた人と話していて「女っぽい感じでやりたくなくて」と言ったら「ああ、そういう感じだろうなと思った」と返されてなんか超すごいめちゃ鬼イラッとしたことがあった。「その人の服装を見るとだいたいどんな歌を歌うかわかる」とドヤ顔で語る中年男性と接して、同様にイラッとしたこともあった。場に求められているようなドレスを着てヒールをはいて口紅をひいて歌うことが(それだけではないけど)苦しくて耐えられず、怒られながらそこで歌うのを辞めたこともあった。
 
そんな感じだったから、降幡さんから「どんな格好で歌ってるの?」と、ちょっと期待を込めたような声で聞かれて「いや、まあ、なんでもない格好で、、」としどろもどろ答えながら、自分全然面白くないな〜!と思った。すごく大事な楽しいことを、自分で封印してしまっているような気がする。特殊メイクまではできないにせよ、格好って、もっと選んで表現できたら、そこまでコーディネートできたらおもしろいのに、現状けっこう消去法でやっていて、最近はちゃんとお気に入りを着ているけど、まだ根本的に納得できていない。

結局これは、似合う服わからん問題で、もう、演奏時の衣装のみならずプライベートでも過去から一生つらいので多分まだまだしんどいんですが、なんとか楽しくしていきたい。う〜ん、ぼんやりしたまま全然わからない、助けて〜!


話題を変えて、
単独公演で、長い作品だけじゃなく弾き語りもやって、やっぱりこういうのもっとやりたいと思ったのでライブができる場所を探しています。結局、自分で企画してなるべく多く責任を負ったほうが得るものが大きい、というのが、ここ3ヶ月くらいでよくわかったことです。まだまだ試行錯誤&修行という感じだけど、これは続けていくと見える地平がありそうだな〜というワクワクがあります!

直近ではGW、5月4日12時から狛江「珈琲参道」というお祭りに出演するのですが、前売りチケットがすでに完売、当日券ちょっとあるようです。
それ以降はライブは決まっておらず、録音がしたいな〜と思っています。全て未定です!
ナレーションは、最近すごい楽しいのを爆笑しながら録りました。そういうお仕事もお待ちしています!



最近は、ゴールデンカムイが終わってしまったことの感慨(とはいえ去年から読み出したニワカなんですが)に浸ったり、友人と旅行に行くのを諦めたことでできた時間で、たくさん眠ったり、走ったり歌ったり本を読んだりしています。近所の図書館が良いことが判明して最高です。あと働いてます。

レタスを乾燥エビと一緒に炒めて塩とナンプラーで味つけたものに本当にハマっていて、ほぼ毎日食べています。昨日、50円でレタスを手に入れて嬉しかったなあ

ブログ、なんのために書いているのか不明ですが、ツイッターとかより大事にしているので今後も書きます。ここまで読んでいただきありがとうございました。またね〜