2 バイク移動につぐ移動と帰宅

7月26日
寝坊した。起きたら10時とかで、少し慌てて支度をした。でも朝ごはんはのんびり食べた。昨日の晩にコンビニで買ったパパイヤと、いただいた屋台の揚げ物と、お米の茶色い羊羹みたいなお菓子を食べた。ココナッツウォーターも飲んだ。ココナッツの具が入っていた。
食べた後、家主の女性のバイクの後ろに乗せてもらって町の両替所へ連れていってもらった。町のほうがレートが良いとのことだったので到着した空港ではほんの少ししか替えずにおいて、ここでまとまった金額を両替した。たしかにだいぶレートが良かった。つい信頼して数えずに仕舞おうとすると、ちゃんとここで数えて確認するんだよと隣から教えてくれて、その場で数えた。ケタが多すぎて混乱する。

洗濯のお店にも寄った。わたしのぶんの服はないけど、洗濯機がない場合こうしてキロ単位でまとめて洗濯に出すんだよというのを教えてもらった。

そのあと日本人アーティストたちが展示をしているというギャラリーへ連れていってもらった。今回この時期に此処にくる一つのきっかけだったイベントだ。バイクで向かう途中、道を歩いている友人に会った。この人、日本で普通に友達で、まさかここで会うと思っていなかったので、再会にメチャメチャびっくり嬉しくて、今日は彼女と行動を共にすることにした。

彼女はもう1ヶ月くらいこの展示を手伝ってジョグジャに滞在しているらしく、こっちでできたインドネシア人の友人2人を紹介してくれた。大学で建築をやっている女性と作曲をしている男性。4人で遊ぶことになった。
インドネシア人の2人のバイクにそれぞれ乗せてもらって、片道20〜30分くらいの道のりを走りに走って、プランバナン寺院に行った。道中、バイク同士はぐれたりしながらなんとか辿り着いた。サラックを売っているお店が道中やたらたくさんあるね、と、どうでもいい話をしたかったんだけど難しくて、サラックたくさんあるね、と言ったら「買いたい?」と返されてしまった。そうじゃない〜と言った上で、独り言で「サラックまたあらあ」みたいなことを言う演出でなんとなく伝えた。伝わった気がするけどコミュニケーションがギリギリすぎる

プランバナンは前回の旅行の時にも見に来た場所だったけど、その時はどうも急いでいてあまりゆっくり見られなかったし全然二回観れた。二回くると、前は少し夕方で暗かったせいもあって全体のシルエットで認識していたひとつひとつの棟が、どういう部分で構成されているのか、以前よりだいぶ見えて、おもしろかった。4人で「このレリーフどういう意味?」といって話し合うのが楽しかった。わたしは英語もろくに話せないので意思疎通がガタガタだったけど、インドネシア人の友人の1人ムティアは日本語がわかるので、たくさん助けてもらった。ちょっと英語できなさすぎて情けなさすぎて、自分これは失敗②だ。4人でジャンプして写真を撮ったりしてはしゃいだ。

作曲を勉強しているランガ(カタカナで書くとなんか合ってない感じ…)は、わたしが歌を歌うというとどんなのと聞いてくれて、ガタガタの説明だけど色々話をしたりiPhoneに入っていたのを聞いてもらったりした。共通の知ってる日本人が何人かいる(わたしが去年の春に鳥取に行った時にたまたまそこで知った瓦を叩いて演奏する人とか)ことがわかって盛り上がった。ジャワ島の伝統的な歌唱に、ポエトリーリーディングと歌が混ざったようなものがあるそうで教えてくれた。マチャパ。モンゴルにホーミーがあるみたいに日本にも伝統的な歌唱のテクニックがあるの?と聞かれたけど、どれのことなのかわからず、一番庶民的に知られているのは演歌のコブシかなあと答えた。

プランバナン寺院をひととおりみて、お腹が空いた!ということで、もう夕方だし、帰り道でナシゴレンを食べることにした。またバイクの後ろに乗せてもらう。さすがに一日中乗せてもらっていると慣れてきて、最初は腕が痛くなるくらい緊張して持ち手を掴んでいたのが、片手を離して膝に乗せていても平気なくらいにはなった。腕よりも脚で支えたほうがちゃんと乗れる感じ。運転手の背中に寄りすぎてヘルメットをゴツゴツぶつけてしまうのは直りきらなかったけど、顔に風が当たるのには慣れて来て、日が暮れはじめてからはヘルメットの顔のカバーもあげて景色を楽しんだ。

寄ってもらったお店は、かなり地元っぽいところだった。お腹も空いていたし、あまり迷わずナシゴレンを頼んだ。氷でお腹を壊すことがあるよと聞いていたけどウッカリ冷たいオレンジジュース(ジュル)を頼んでしまった。
調理している様子を見ていたら、これにはビックリしたんだけど七輪に炭を入れてそこに小さい鉄のフライパンを置いて作っていた。ガスどころじゃなかったし、七輪と同じくらいの大きさの小さい扇風機で、炭に風を送っていた。扇風機はいろんな油やカスでドロドロにコーティングされてしまっていて、年季を感じた。
ナシゴレンは、とても美味しかった!!少し辛いのにしてもらったら丁度よかった。ジュルはあまり甘みのないオレンジジュースに底の方にザラザラと砂糖が入っていてなかなか斬新だった。氷を警戒してさっさと飲んでしまったけど美味しかった。ナシゴレンとジュルで、日本円にして130円くらいだった。空港で飲んだスープの値段のバカ高さがわかってきた。

またバイクに乗って、日本人の友人(もう1ヶ月いるけど明後日あたり帰ってしまう)がお土産を買いたいとのことで、マリオボロというところに行った。立体駐車場の坂をバイクで登る頃には「ンァーー!(きついの意)」と2人で言って盛り上がったりできるくらいにはなった。
マリオボロは渋谷とか原宿か、あるいは浅草みたいなところだった。お店がたくさん並んでいて、人で賑わっていて、屋台も出ていて馬車が走っている。映画館のあるショッピングモールもあった。わたしたちはバティックを物色して、それぞれ目当てのものを購入した。めちゃめちゃたくさんバティックの店があった。安いものから信じられないくらい高価なものまであった。

最後にジェラートを食べようといってまたバイクでひとっ走りしてもらった。あとから聞いたら地元の人にも観光客にも人気のお店らしい。名前はたしかテンポジェラート、店内にはイケイケな音楽が大きい音量で流れていて若いお客さんがたくさんいた。わたしはレモングラスラズベリージェラートをあんまり迷わずに頼んでしまったけど、友人たちは一口味見システムを使って色々試していた。アッしまった、と思った。ジェラートは200円くらいして、さっきのナシゴレンが二回食べられる…と思ったけど、かなり美味しかった。

ジェラートを食べてLINEのIDを交換して、帰路に着いた。自転車を借りることになっていたのでギャラリーに一旦戻り、そこで1人解散して3人で日本人の友人が泊まっているというお宅へ(なんとなく)向かった。バイクの後をチャリで追いかけて車道を走った。こんなヤンチャして大丈夫なのかとだいぶハラハラした。
少しスーパーマーケットで買い物をして、友人宅でそこの家主のお兄さんと少しお喋りもして、ようやく帰路に着いたのだけど、夜で1人で、あんまりわかっていない国の街で、チャリである。1人になった途端かなり不安になった。しかも借りたチャリにはライトが付いていなかった。でも、日本で家を出るときに玄関でなんとなく手に取った、自分の自転車用のLEDライトが鞄にはいっていて、試したらかなりアッサリ取り付けられた。すごく助かった。奇跡だと思った。本当に持って来てよかった。

「治安はぶっちゃけクソいい」と聞いてはいたものの、あんまりわかっていない風でいると悪い人に狙われる気がしたので、さも分かっている感を醸し出しながらグイグイ走ったら案の定、道に迷った。
グーグルマップで確認しながら修正して、なんとかこっちかなというふうに家に近づいていく。ここのような気がするという道を曲がって走っていたら、道のはしにあるお店の角にお婆さんが座っていて、わたしに向かって片手を挙げた。?!?!!と心底ビックリしたけど、よく見たら昨日の晩に、家主のお姉さんと晩御飯を食べようとして混んでいたからやめたお店のお婆さんだった。家主のお姉さんが、「この子は日本から来たのよ〜」みたいに少し話をしてくれて、「そうなのね〜」「そうです〜」みたいに笑顔をかわした、あのお婆さんだ。
なんと言ったかあんまり覚えていないけど、わたしは「ワァー!サンキュー!ちょっと道に迷ってたの本当にほっとした!テリマカシー(ありがとう)!!」みたいなことをチャリを止めずにお婆さんに向かって叫んで、お婆さんも「イェア〜」みたいな返事をくれた。わたしは手を振って家路を急いだ。もうすぐそこだ大丈夫だ、という安心で元気になっていた。



家に着いたら家主のお姉さんはまだ帰宅していなくて、わたしはやっと(昨日浴びそびれた)シャワー、はないので水を浴びて体を洗って、ついでに服を脚で洗濯して、すっきり眠りについた。

また明け方の3時にお祈りの声に起こされたけど今度は電気をつけたまま寝落ちしていたから助かった。ちゃんと支度してちゃんと寝直した。