ゴキゲンに

アレルギーというわけでもないし、香りも味も好きだけど、自分の胃と相性が悪いようで、たくさん摂取できない食べ物が、わたしには二つある。バターとコーヒーだ。

バターはまだ勇気が出なくてクロワッサンやデニッシュなんかは食べるのが少し怖いけど、コーヒーは最近、付き合い方がわかってきた。ゴキゲンな時にだけ飲む、だ。

中学生くらいの時は、背伸びみたいな感じで「眠け覚しだ」とかいって夜中に飲んだりしていたけど、あれはあらゆる意味で全然ダメなコーヒーだった。スッカリやられて、高校生になる頃には胃がコーヒーを受け付けられなくなってしまった。原因が本当にコーヒーだったのかどうかはわからないけど、胃が痛くなるのは嫌だから、なるべく避けて過ごすようになった。

でもやっぱり飲みたい時はあって、そういう時は、今イケるか?ダメか?を、自分に問う。その累積の結果、「何かしっかり食べた後、または体調のいい時」になら飲める、とわかってきて(普通)、いつしか、わたしにとってのコーヒーは、「ゴキゲンな時のお供」に変わった。

たとえば去年の夏に、すごくいいダンスの公演を観た帰り、嬉しくて仕方がなくて喉が渇いてしまって、普段なら怖くて飲めないアイスコーヒーを何故か飲みたくなって、買って飲んだ。それが凄く美味しくて、ひとり、ウワァ〜、最高、ってなったのが忘れられなかったりする。全然、横浜駅ドトールかなんかだったんだけど。あの時にコーヒーがあるのとないのとでは、帰路の充実感が全然違ったと思う。

そんなふうに距離を保ってきたコーヒーだけど、つい、誘惑に負けて、というか、たぶん機嫌が良くて、先日、挽いた状態のコーヒー豆を買ってしまった。全然たいしたことない、スーパーで売っている、それもワゴンで安くなっていたやつなんだけど。

それで。

さっき、借りきてきたDVDの映画を観ていて、そのなかで幾度となく「コーヒーおいしい〜」というシーンがあって、単純なわたしはいてもたってもいられなくなって、一時停止をして台所へ立ってお湯を沸かし、ひとりで、下手なりにコーヒーを淹れて飲んだのだった。

なんだろう、残念なことに、そんなに美味しくなかった。しかも、映画が進むにつれて、「自分で淹れるよりも人に淹れてもらったコーヒーが美味い」みたいな話になってきて、やっぱりそれか、ガーン、となったりした。

でも、ゴキゲンに拍車をかけるにはお酒よりも有効だったみたいで、興奮気味の女っぽい文体でこうして書き付けてしまった次第である。

昨日の夜にも映画を観たけど、ティッシュを真っ黒にして泣いて、ボロボロになった顔を鏡で見て、ああ、風呂に入ろう…みたいな感じだったから、今日みたいに、一時停止してまで何か食べたり飲んだりしたくなる映画は普通に良かった。元気になりました。

今日は夕方のバーベキューで余ったトロトロの新玉ねぎを貰ってきたので、数時間後の朝に食べることと、そのあと映画館に出かけることが決まっている。ランチが美味しくなる映画だといいけど、果たしてどうかな。